遠隔診療 法務ガイド

遠隔診療における患者同意取得の法務と実務ガイド

Tags: 遠隔医療, 患者同意, 法務, 説明義務, ガイドライン

遠隔診療を導入・実施される上で、患者様からの適切な同意の取得は極めて重要なプロセスです。対面診療とは異なる特性を持つ遠隔診療においては、患者様への十分な説明と、それに基づいた同意の取得が、信頼関係の構築および法的なリスク回避のために不可欠となります。

この記事では、遠隔診療における患者同意の取得について、法的な視点と実務上のポイントを解説いたします。

遠隔診療における患者同意の重要性

遠隔診療は、情報通信機器を用いて行われる診療であり、対面診療とは異なるメリット(通院負担軽減など)とデメリット(触診ができない、通信環境に依存するなど)があります。また、診療情報が電子的にやり取りされるため、情報セキュリティに関する配慮もより一層求められます。

これらの特性を踏まえ、患者様には以下の内容を十分に説明し、ご理解・ご納得いただいた上で遠隔診療を受けていただく必要があります。

これらの内容を十分に説明し、患者様が自らの意思で遠隔診療を選択し、同意することが、インフォームド・コンセントの観点からも、法的に適切であるとされています。

患者同意取得に関する法的な要件と関連ガイドライン

遠隔診療における患者同意に関する明確な単一の法律は存在しませんが、以下の複数の法令やガイドラインが関連し、適切な同意取得を求めています。

これらの法令・ガイドラインに基づき、遠隔診療を開始する前には、患者様に対し、遠隔診療特有の事項を含む詳細な説明を行い、その内容について同意を得る必要があります。

実務上の同意取得方法

患者様からの同意取得方法は、必ずしも書面に限定されるものではありませんが、説明した内容と同意を得た事実を確実に残すことが重要です。主な方法としては以下が考えられます。

  1. 書面による同意:

    • 医療機関にて説明を行い、同意書に署名していただく方法です。来院時に説明・取得することも可能です。
    • 郵送で同意書を送付し、署名後に返送していただく方法もありますが、説明が対面で行えない点に留意が必要です。
    • 電子署名サービスを利用して、オンライン上で同意書への署名を行う方法も有効です。
  2. 電磁的な方法による同意:

    • 遠隔診療システム上に同意事項を表示し、「同意する」等のチェックボックスやボタンをクリックしていただく方法が一般的です。
    • ただし、システム上での同意のみとする場合は、事前に同意内容に関する十分な説明を別で行うか、システム内で詳細な説明を表示し、患者様がそれを確認したことを記録する仕組みが必要です。
    • 説明の様子や同意の意思表示を、映像や音声で記録し、保管する方法も考えられます。

どの方法を選択する場合でも、単に同意を得るだけでなく、「いつ」「誰に」「何を」「どのように」説明し、患者様がその内容を理解した上で同意したのかを明確にすることが重要です。説明時には、専門用語を避け、分かりやすい言葉で、患者様の疑問に丁寧に答える姿勢が求められます。必要に応じて、説明資料(パンフレット、ウェブサイトのFAQなど)を活用するのも有効です。

同意取得の記録と保管の重要性

同意を取得したという事実、および説明した内容を適切に記録し、保管することは、後々のトラブル防止や、万が一問題が発生した場合の対応において極めて重要です。

診療録(カルテ)には、遠隔診療を実施したこと、患者様の同意を得たこと、同意を得るにあたり説明した主な内容などを記載します。同意書や、電磁的な方法で同意を得た際のシステム上の記録、録音・録画データなども、診療録と合わせて適切に保管する必要があります。

記録は正確かつ詳細に行い、いつでも参照できるようにしておくことが求められます。保管期間についても、診療録の保管義務に準じて適切に管理してください。

まとめ

遠隔診療を安全かつ適法に実施するためには、患者様からの適切な同意取得が不可欠です。関係法令やガイドラインを遵守し、遠隔診療の特性を踏まえた十分な説明を丁寧に行い、患者様にご納得いただいた上で同意を得てください。

また、同意取得のプロセス(説明内容、方法、日付、同意の意思表示など)を確実に記録し、保管することが、医療機関と患者様双方にとっての安心につながります。本記事が、貴院における遠隔診療の同意取得に関する実務のご参考となれば幸いです。